【講演会報告】
アベノミクスと憲法
――経済活動の主役たちに求められるもの
講師：浜 矩子さん
（12月2日　衆議院第二議員会館　第１会議室）

米国大統領がトランプになったことで、日本は？ などについてお話しいただきました。（以下要約）

　安倍自公政権の言葉には気をつけよう。通称「カジノ法案」は将来的に軍費捻出への道に繋がるのではと胡散臭さを感じる、と浜さん。
　２０１３年の春先から“アホノミクス”という言葉を使い始めた。11月に『どアホノミクスへ　最後の通告』を毎日新聞出版から出した。これは前著「さらばアホノミクス――危機の真相」の続編である。言い続ければ状況は変えられる。世間の空気が変わってきていることを安倍自公政権は肝に銘ずるべきだ。国民不在の経済成長は完全崩壊に進んでいる。

トランプ政権の示唆するもの
　「日本や韓国に米軍が駐留するのはおかしい。駐留してほしければ金を払え」というのは、安倍には妙（たえ）なる調べに聞こえるだろう。「米国に守ってもらえないのであれば自前でやるしかない」と。トランプは「日韓も核武装せよ！」と言っていることだし、“自衛隊を国防軍にしよう”となる。安倍にとっては福の神だ。15年４月訪米時、安倍首相は天皇を元首にする“戦後レジームからの脱却を”という演説をした。日米安保体制を振りほどいて大日本帝国の親分になろうという訳だ。米国が言ってくれたからやり易いと思っているはず。

トランプとアホノミクスの関係
　安倍の立ち位置は、ＴＰＰではなくＴＹＴ（とてもやばいトランプ）だ。２０１５年４月アメリカ議会で安倍が「ＴＰＰは経済効果もさることながら戦略的価値に効果あり」と言った。この発言は、日本では戦争への苦い経験から絶対禁止表現である。それぞれの国の経済的取り決めに脆弱性を持たせぬ。自国の領土の拡張、天然資源の拡大、広域市場を囲い込む、などは戦争への道に繋がる。安倍にとって米国がＴＰＰから抜けるのは嬉しいこと。おまけに中国が入らないから、日本がリーダーシップを取れる！と。米国抜きのＴＰＰは、21世紀の大東亜共栄圏に向かっている。トランプの出現は、安倍には笑いが止まらない。
　そんな状況の中で浜さんは、戦後的枠組みの中で今日的時代適合性を持つのがＷＴＯの理念、自由・無差別・互恵こそが平和のための通商理念でありグローバル時代に最も相応しい物の考え方ではないか、と。

トランプと憲法
　現行憲法はすごいものと感じる。９条があって良かった。グローバルな世の中で、「前文」にはグローバル時代を予見する貴重な意味がある。例えば「諸国民との協和による成果」とか、「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なもの」など、まさにグローバル時代の原則だ。
　翻ってトランプは「アメリカファースト」である。安倍は「強い日本を！日本が世界一！」と振りかざす。
　イタリアの国民投票、オーストラリア大統領選、フランスなど世界が右翼化する中、ドイツのメルケルさんが頑張っている。ヨーロッパの右傾化を「反グローバリズム」と総称するのは危険だ。敵を間違えるな。国家主義の強化に繋がる「反グローバル化」という発想は危険。市民派が陥りやすい落とし穴だ。
　「ブラック企業」という表現が盛んに使われるが、「企業」はつけないほうが良い。人に対してブラックな経営はあり得ず、人間を幸せにするのが経済活動なのに、今の日本は生存権を脅かしている。
　参院選の時、安倍は「アベノミクスは道半ば」と言ったが、財政と金融のアンバランスは極限。それでも破綻を認めず同一労働、同一賃金と言い始め、敗北宣言だが、この開き直りが怖い。統制経済に繋がる。
　
　この他、浜さんには切れ味鋭く縦横無尽にお話しいただきました。待ったなしに主権者意識が問われていることを自覚し、現行憲法の持つ普遍性を再確認する機会となりました。
　最後に、浜さんの著書『どアホノミクスへ――最後の通告』の帯書きを紹介します。「アホノミクスやトランプイズム型の時代錯誤的国家主義が前面に出ようと蠢いている。…中略…この時代錯誤的誇大妄想に最後通牒をたたきつけるべき時だ」
（文責・秋山　淳子）